各支部会員発表

Moderator 木原敏裕先生 鈴木真名先生 コンベンショナルレストレーション

Keishi Adachi顆頭を考慮した咬合挙上
On the Bite-Raising that takes into account the position of condyle

北陸 SJCD 安立 圭志 Keishi Adachi
大桑歯科

“咬耗” 数本だけなら私も気に留めないのだが、“全歯咬耗” ともなると我々歯科医師は2つの選択肢を迫られることになる。 “咬耗” から逃げるのか、勇気をもって “咬耗” に立ち向かうのかである。 本症例の患者は、重度の咬耗治療を希望するも、3件の歯科医院に治療を断られ、あきらめきれずに当院に助けを求めた次第である。 知識やスキルも乏しく明らかに自分に出来ない事をするのは、歯科医師の暴力だが、今の自分の精一杯の知識と愛情で熟考すれば成功する道筋 が見つかる事もある。歯科治療の多くは不可逆的な治療である。歯科医師の都合でエナメル質はけっして再生などしないのである。その為全顎 治療する際は、患者とトラブルにならないよう信頼関係を構築すると共に診査診断、治療計画の熟考がもっとも重要となる。今回治療するにあ たり、プライオリティの高い注意事項として、初期治療時の咬合挙上後であってもある程度原状回復可能な治療介入である事、接着を活用し 抜髄を避け生活歯を守る事、長期に渡る咬合高径評価の過程で臼歯部プロヴィジョナルクラウンの咬耗が少ない事がある。 失われた咬合高径は、単純に挙上しても良いものか、咬合高径が下がった事は生体の代償と適応の原理による必要行為だったのではないのか。 何十年と生活してきた顎位を変えるということは、かえって患者の QOL を低下させる可能性すら考えられる。咬合高径の変化により、日常が 非日常になる過程で顎関節や筋肉のリモデリングに適応できるよう、最終補綴は咬耗の少ないプロヴィジョナルクラウンで十分に検証期間を おいてから補綴されるのが望ましいと考える。 本症例は咬合高径を評価するため、顎関節部の CT やセファログラム、中心位、筋肉の安静位や顔貌の軟組織のバランスなどを多角的かつ複合 的に評価し、咬合高径を新たに評価設定している。また生体模倣学に基づいた歯牙や軟組織の審美性の回復と6ヶ月ごとに機能性の検証を重ね、 生体に許容される範囲で顆頭の位置と咬合高径のバランスを模索調整し、機能と顎運動の調和を目指した症例である。


Atsuhiko Mori顎関節症状を伴う下顎左側偏位症例に対して補綴的に治療を行った一症例

東北 SJCD 守 篤彦 Atsuhiko Mori
歯科クリニック守

初診 2009 年 12 月、50 歳女性患者が「最近顔が曲がってきた」という主訴で来院。その他、慢性的に頭痛、肩凝り、目の奥の痛み等も訴え ていた。 口腔内所見は全顎的に補綴物も多く、下顎は正中で 3mm 左偏し左上側切歯から第二大臼歯まで交叉咬合となっていた。 また、パノラマ X 線写真からも顎関節の極端な左右非対称、左側下顎頭のフラット化、PA セファロ X 線写真からは咬合平面の左上がり、鼻腔 の変形、側方セファロ分析からはオープンバイトで ClassIIIの傾向が強いことが観察された。顎機能検査(キャディアックス)では左側顎関節 に強いコンプレッションがかかっている事が推測された。 以上の検査結果より「顎関節症状を伴う骨格性の下顎左側偏移症例」と診断した。 治療計画は補綴処置を中心に行う事とし、最初に可徹式スプリントにて顎位の設定を行い、顎位が適応してきた時点で固定式のレジンオーバー レイ、そしてプロビジョナルレストレーションに交換し顎位を3~4年をかけて適応させてきた。それらの処置により左側の交叉咬合と下顎の 左側偏移は改善され、慢性的に起こっていた頭痛、肩凝り、目の奥の痛みも解消されたため、再評価を行い、ファイナルレストレーションにて 最終顎位の安定化を図った。まだ、術後6ヶ月程度の経過であるが、問題なく良好に経過しているのでここに一症例として報告する。今回の 発表に関し皆様のご意見ご指導を頂きたい。


kamaeComprehensive Treatment Planning of Debilitated Dentintions”
“衰弱した口腔環境を有する患者に対する包括的治療計画” 

東京 SJCD 構 義徳 Yoshinori Kamae
六本木カマエデンタルオフィス

日々臨床を行っていると、さまざまな患者さんの状態と出くわし、頭を悩まされる。 骨格的な問題に加え、欠損、咬耗、破折、弱った歯周組織、カリエス、顎関節症などを伴う場合はなおさらである。 今回、そのような患者さんを治療するにあたりどのように考え、仕上げていかなければならないか1つの症例を通してみなさんと ディスカッションしていきたいと思います。


 

yamaoka前歯部クロスバイト症例に対する咬合再構成の一例

北海道 SJCD 山岡 義孝 Yoshitaka Yamaoka
医療法人社団 小樽山岡デンタルオフィス

 修復治療において私達は永続性(Longevity)並びに患者満足(Satisfactory)を目指し解剖学的、機能的調和、審美性などを考慮しなければ ならない。また これらを実現する為には適切な診査・診断を基に治療計画を立てることが重要である。そして、補綴物の永続性を考慮する時、 バーティカルストップ、アンテリアガイダンスは必須であり、不適切なガイダンスは予後不良の原因になる事は言うまでもない。しかし、日々 の臨床の中で前歯部クロスバイトやオープンバイトの患者が矯正治療、特にブラケット装着に関して拒否するケースも少なくない。今回の発表 では長期にわたり不適切な咬合治療によって様々な症状を訴えていた患者に対し、限られた条件の中、治療のゴールを設定し、顎位や咬合高径、 前歯切縁の位置など各ステップごとに再評価を行い患者満足を目指した症例を、反省を踏まえ術後 7 年の経過とともに提示し考察する。

Moderator 木原敏裕先生 鈴木真名先生 コンベンショナルレストレーション

murataThe Management for The Complex Prosthesis on
Severe Periodontitis Patient with Type II Diabetes.

新潟 SJCD 村田 雅史 Masashi Murata
村田歯科医院

重度に進行した歯周疾患症例において、残存歯と歯周組織を保全し、長期間にわたって機能させる為に、補綴に当たってはどのような配慮が 必要であろうか。歯周補綴は、適切な歯周治療によってはじめて可能になるが、骨縁下欠損や分岐部病変の診断と処置、歯周補綴の為の歯周外 科処置を行なう場合、あらかじめ補綴上の要点をイメージし治療の妥協的なゴールを念頭に置き、目的に合致した処置を選択する必要がある。 また歯列の修復にあたっては、疾患の活動を極力コントロールし、歯周疾患に伴う解剖学的歯-歯周組織の変形に対処しなければならない。 すなわち、歯周補綴が直面する問題点には以下のように対処しておくことが重要である:1転位歯、位置異常歯、臨床歯冠長の長い歯に対し、 顔貌に基づく評価を行い、適正な歯列を新しく位置付ける。2歯と歯周界面を審査し、支台歯形成時まで必要な全ての歯周問題を解決しておく。 3臨床歯冠長の長い歯、歯根切除歯などの無髄歯の構造的な問題に対処する。4リジッドかノンリジッド連結か、適切なスプリントの選択を行う。 5重度の骨吸収を伴う欠損歯列を修復する際の最重要課題は咬合であるため、適切な顎位を決定する。 今回、演者は以下のような II 型糖尿病を有する重度歯周炎症例に対して歯周外科を含む全顎的歯周治療を行い、前述の様々な点を考慮しな がら、歯周補綴として Re-inforced Ring Denture(RID) 術式を採用することにより極力歯牙の保存に努め、機能的ならびに審美的な咬合の回復 を達成するとともに、血糖値コントロールにも大きく改善がみられたため、その治療経過について報告し、諸先生方に御助言と御指導を仰ぎたい。
【症例】
性 別:男 性
生年月日:1955年2月12日
年 齢:59歳
職 業:会社員
初 診 日:2014年9月26日
主 訴:完治感の無さと、全顎歯牙喪失への失望と咀嚼の不充分による健康維持の不安感 全身的既往歴:糖尿病発症により内科医のインスリン注射療法を受診中 歯科的既往歴:30年前から前医で歯科治療を受診して来ている。
現 症:全顎に亘る歯牙の中等度以上の動揺と全顎からの出血、排膿が認められた。

Moderator 土屋賢司先生 松川敏久先生 審美修復治療

doi咬合再構成 ~顎位とトゥースポジションに着眼して~

京都 SJCD 土井 守雄 Morio Doi
どい歯科クリニック

局所単位でその場限りの治療を繰り返すことで、歯牙・歯周組織はダメージを受け、咬合状態も複雑になるケースを臨床の場においてよく目 にする。 咬合が崩壊した原因として『仕事が忙しい・時間が取れない・金銭的に余裕がない』などの患者側の理由もあげられるが、全体像を診ずに、 その場限りの治療を行ってきた歯科医にも原因の一端があるのではないだろうか? 全体像を見るには、悪くなった原因を診査・診断し、それを改善するため一口腔単位で治療計画を練り、確実に治療を進めていくことが大切で ある。また、治療後の安定を高めるには機能的なことも重要である。 私自身、咬合再構成のケースを手がけた経験はまだまだ少ないが、多くの先生方にアドバイスを頂き、治療ゴールにたどり着いた。 そこにはインプラントやマテリアルの進歩の恩恵もあるが、過去において歯周補綴を実践された先生方の貴重な経験により、シンプルな治療 計画や補綴設計にすることができたことも忘れてはならない。 今回のケースでは特に、顎位・トゥースポジションに注意しながら治療を進めていく過程にフォーカスを当てて見ていただきたい。


 

yoshiki中等度~重度酸蝕症患者に対する病因とそれに基づく治療介入の時期と低侵襲な治療計画

名古屋 SJCD 吉木 雄一朗 Yuichiro Yoshiki Y’s
デンタルクリニック

近年、酸蝕症(Erosion)に起因し口腔内に審美的、機能的問題を有する比較的若年層の患者が増えているという 2006 年 Jaeggi T ら、 2011 年 A Lussi らの調査報告がある。また 2001 年 Rinald G らはそのような所見を有する患者に対し、それぞれの病因・原因を確定する事が、 治療介入の時期の決定、治療計画の立案をする上でとても重要になってくると述べている。そして、このような若年層の患者に対する治療に おいて、Biomimetic なコンセプトに基づいた低侵襲(Minimally Invasive)で確実な接着修復(Composite Resin,Bonded Porcelain Restorations) は、 とても有効な手法であると思われる。また、補綴治療を行う上で、現存する顎位を利用した治療計画か、咬合再構成が必要な症例なのかの診断が 大切になってくる。
今回、
(1)中等度に酸蝕症が進行し、このままでは大きな咬合崩壊に繋がる事が予測された為、早期の治療介入が必要だったケースに対し、犬歯 舌面・臼歯部咬合面に Lithium Disilicate pressed ceramic を、前歯舌面には Composite Resin を用いて機能の回復と安定を図った症例
(2)重度に酸蝕症が進行し咬合崩壊をきたしていた為、咬合再構成が必要だったケースに、全顎的な接着修復にて治療を行い機能と審美の 回復を行った症例
について、提示する。 このような酸蝕症患者への治療では Biomimetic なコンセプトによる、マテリアルの特性を活かした接着修復のデザインが大切であると感じた。 諸先輩方のご意見やご指導宜しくお願いいたします。

Moderator 土屋賢司先生 松川敏久先生 審美修復治療

ueno修復治療の目的を達成するためのプロビジョナルレストレーションの重要性
~4つのガイドラインと治療ゴール~

大阪 SJCD 上野 貴士 Takashi Ueno
伊藤歯科医院・上野兄弟歯科

 修復治療の目的は、1審美性(Esthetics)2機能(Function)3構造力学(Structure)4生物学的恒常性(Biology)以上4つのガイドラインに 沿って病的な状態の改善と良好な機能の回復にある。そして我々が担っている大きな仕事は、歯を含めた残存組織の保全を図り、患者の Q.O.L. の向上を手助けすることと考えている。 各症例により治療結果を左右する重要なポイントは異なるが、臨床において基礎資料を収集して的確に問題点を列挙し、その原因を探り改善に 努めなければならない。 我々がその目的を達成するために、重要な治療ツールの一つとしてプロビジョナルレストレーション(以下 Provi と記す)がある。そしてそれを 適正に使っていくことが、良好な治療結果を生むと考えている。 特に咬合再構成を行う症例においては、治療ゴールをイメージするうえで適切に使っていくことが重要である。 今回の症例では、各段階で清掃性の高い環境を与え、咬合を改善し、機能の回復と同時に審美性から顔貌および口唇との調和に関しても Provi を用いて再評価を繰り返し行った。
・Primary Provisional Restoration
・Secondary Provisional Restoration
・Final Provisional Restoration
また再評価の際、下顎位の確認も重要であるが、ブラキシズムにさらされることによって過度な咬耗が生じ、咬頭嵌合位の維持・安定が困難と なるので、対応に注意を払う必要がある。 Final Provi においては装着と同時にプロテクションスプリントの使用が重要と考えている。さらに今回の症例は、ヘビーブラキサーのため、咬合 面に硬質レジンを使用することで、咬耗を軽減させ、Final Provi で決定した咬頭嵌合位をより変化が少ない状態で正確な咬合採得が出来た。 そして精度の高いクロスマウント変法を用いることにより模型装着ができ、良好な治療ゴールを得られたので、報告させていただく。


oda外科的・補綴的手法を駆使した審美的な歯肉ラインの構築
̶プラスティックサージェリーとサブジンジバルカントゥアーの調整̶

広島 SJCD 小田 師巳 Norimi Oda
おだデンタルクリニック

現代の審美領域における修復処置には、機能性はもちろんのこと、患者の顔貌に調和した美しい口元を創造する審美性が必要とされる。そし て、患者によっては獲得すべき審美は歯のみならず、その歯槽部領域にまで求められ、特に歯肉ラインの調和が患者の審美満足に大きく関与す ると思われる。よって、審美領域にインプラント治療を行う場合、抜歯によって吸収した歯槽堤を回復するために、水平的にも垂直的にも組織 増生術が必要となる。 水平的硬組織増生においては、吸収速度が遅い骨補填材と自家骨を混在させる骨再生誘導法(GBR 法)が広く適用され、ある程度の予知性が 示されている。しかし、垂直的 GBR 法はテクニックセンシティブであり、大きな外科的侵襲が必要となるため患者には受け入れにくい治療法 かもしれない。そこで今回、水平的にも垂直的にもボリュームが足りない裂開状骨欠損に対し、インプラント体埋入時に GBR 法による水平的 骨増生を図り、同時に CTG を用いたプラスティックサージェリーによって軟組織による垂直的増生術を行った。 一方、審美的な上顎の歯肉ラインとは、左右対称な中切歯間とある程度の非対称性が容認される側切歯、犬歯で構成され、その非対称性の程度 を患者によって変えることで、画一的な審美ではなく個性的な自然美を作りあげることができると考えられている。また、経年的に安定した歯肉 ラインを維持するためには、CTG を用いて厚いバイオタイプの歯肉に改変することが有効とされる。そして、これらの要素を踏まえた歯肉ライ ンを構築するためには、プロビジョナルレストレーションのサブジンジバルカントゥアーの調整を駆使した緻密な調整が要求される。 本日は、前歯部の歯肉ラインに対する審美障害を主訴に来院された 62 歳の男性患者に対して、診査・診断から計画した歯肉ラインを、外科的 ・補綴的手法を用いていかに構築し、その情報をどのようにラボサイドに伝達して最終補綴装置に反映させるかについて述べてみたい。


tokudaLife Changing Dentistry

福岡 SJCD 徳田 将典 Masanori Tokuda
とくだ歯科医院

口元に自信のない患者に、笑顔を創造することができるのも歯科治療の醍醐味であると感じる一方で、歯科治療は不可逆的な治療が多いこと から医原性疾患を生み出す危険性もはらんでいる。 その中でも歯科医院に対して蓄積された不安や不満を抱え、転院を繰り返し、心理的・社会的損失を受けている患者に対して、病的な状態から 生理的に安定した治療咬合を与えることにより、患者の表情、笑顔が変わり、生活に変化が現れてきたことを治療、術後、メインテナンスを 通じて経験する機会が増えてきた。 患者は54歳女性。 右上臼歯部の脱離を主訴に来院。 今回の受診の前に数件の歯科医院を転院しており、ほぼ全顎的に修復治療がなされ、顎位の不安定さに加え精神的にも不安定な状況であった。 広義の” 咬合違和感症候群” とも思われる所見も認められた。 治療目標として、CR ポジションにおける安定した Posterior Support、Anterior Guidance による臼歯部のディスクルージョンがスムースにお こなえる治療咬合を付与することをゴールに設定した。 骨格的には skeletal ClassII、上顎骨の前突かつ下顎の劣成長で ANB は 12°を呈し、一般的には歯性の補償のみでは対応が困難とされ、外科 矯正の適応も考慮しなくてはならないが、本症例では外科矯正は患者の希望もあり選択せず、矯正医と協議の結果、上顎の片顎抜歯にて対応 することとした。 術後4年、口腔内の変化は特になく、現在では心からの笑顔を見せていただけるようになった患者の報告をさせていただく。

Moderator 伊藤雄策先生 小濱忠一先生 インプラント治療

natoriManaging Congenitally Missing Lateral Incisor,using the Implant and Orthodontia

福岡 SJCD 名取 徹 Tohru Natori
つるみ歯科診療所

現在、壮年期の歯牙欠損保有者は減少傾向にあると言われている。それに対し、2010 年に発表された疫学調査では、日本人若年者における 永久歯先天性欠損を有する者の割合は 10.06% と増加を示しており、今後さらに増加すると推察されている。このことから、今後、永久歯先 天性欠損患者が歯科医院を受診することが増加するであろうことは容易に想像がつくところである。 永久歯先天性欠損は、歯列不正や審美障害、咬合異常を伴うことが多く、その治療には複雑な治療の組み合わせが必要であり、困難なことが多い。 今回、側切歯先天性欠損の、31 歳女性に対し審美性と機能性を考慮しながら矯正およびインプラントを用いて修復を行った症例を経験したので 報告する。


yamazaki

Prosthetic procedure of fixed Implant-supported Prostheses
in the edentulous Maxilla – A case report

東京 SJCD 山﨑 治 Osamu Yamazaki
原宿デンタルオフィス

重度の歯周症患者は、その病態ゆえ歯の位置移動や欠損を伴い、アンテリアガイダンス、バーティカルストップの欠如により、臼歯部咬合 崩壊をきたすことがある。また、高度な歯槽骨吸収により、どの歯を残すのか?はたまたすべて抜歯なのか?というような抜歯基準をはじめ、 その後の最終補綴物も患者の希望により可撤性補綴物から固定性補綴物まで多様な治療計画となり、より複雑化する。患者がインプラント支持 による固定性補綴物を望んだ場合、適切な埋入本数、ポジションはもとより、マテリアルの選択や固定様式(スクリュー or セメント)等を考慮 して治療計画を立案すべきである。 更には、治療咬合を与えるべく咬合再構成の必要な症例では、顎位の設定はもちろんのこと、歯の位置移動や欠損に対するアプローチは、矯正 治療やインプラント治療などの様々な分野の知識や技術を統合が必要となる。このような複雑な症例においては、複数の診療科目の専門医が ディスカッションをして、1つのゴールを目指す治療が理想的である。とはいえ、現実はその複雑さゆえに治療途中で様々な問題が生じ、方針 転換を余儀なくされることも多い。私のような若い世代は、技術・経験不足もその要因になりうるだろう。 今回は、54 歳、男性、咀嚼障害で来院した患者にインプラントを用いて咬合再構成を行った症例を補綴操作にフォーカスして提示しますので、 皆様のご指導の程宜しくお願い致します。


katsube

ヘビーブラキサーにインプラントを用いた咬合再構成
(遊離端欠損における補綴の Longevity)

大阪 SJCD 勝部 義明 Yoshiaki Katsube
医療法人幸恵会カツベ歯科クリニック

近年、歯科臨床において咬合再構成を行う場合、欠損部位に対してインプラントを用いることにより、力のコントロールという点から良好な 結果を得られるようになってきた。特に遊離端欠損において、義歯による対応では長期にわたって咬頭嵌合位の安定を得ることが困難であり、 また鉤歯や残存歯への荷重負担が大きくなりやすい。多くのケースでは遊離端義歯で対応すると欠損部が拡大していきやすく、ついには咬合 崩壊から総義歯へという運命を辿っていく可能性が高いと考える。しかし、インプラントは臼歯部に確実な咬合支持を与えることにより欠損部 の拡大を最小限におさえることができ、咬頭嵌合位の安定と歯列弓の保全を得やすく、Longevity という観点から有利な補綴方法と考えられる。 さらに重度ブラキサー患者においてもインプラント補綴は機能を回復させる上で非常に有効なものと考えている。 今回の発表では、インプラントによる機能回復を希望して来院された患者に対し、インプラントを用いて確実な咬合支持を得られる準備をし、 上部構造体に的確なバーティカルストップを与え、咬頭嵌合位を安定させた咬合再構成症例を報告する。 患者は59歳男性で、臼歯部の多数歯にわたる遊離端欠損を有するため、すれ違い咬合に近い状態になっており、咬頭嵌合位の病的な偏位がみ られる。また残存歯への過重負担やブラキシズムによる咬耗などの機能的な問題がいくつか見られ、咬合再構成が必要であると判断した。 次に診査・診断の段階から担当歯科技工士とディスカッションを行い、ブラキシズム特に、クレンチングによる術後の力のトラブルに対する 解決策を考えた。インプラントブリッジでは補綴物の構造上、クレンチング時の咬合圧によってたわみの力が生じる。その結果、上部構造体の 破損やスクリューの緩み、あるいはインプラント自体の破損・喪失がおきるリスクが高いと考えた。そこで1歯に対し1本のインプラントを 埋入し、骨体のたわみを考慮し、単独冠でインプラント補綴をおこなう計画を立案した。まずはプロビジョナルレストレーションで咬頭嵌合位 の安定と臼歯咬合面形態を再評価する。次に臼歯離開が得られやすいアンテリアガイダンスと臼歯咬合面形態を再評価した。そして最終補綴物は PFM と PFZ を用いた。現在治療後4年7ヶ月経過しているが、残存歯における垂直性骨欠損の消失や歯根膜腔拡大の改善などが認められ、良好 な経過をたどっているため報告させていただく。


sato

自家歯牙移植の長期経過症例から歯根膜の重要性を考える

熊本 SJCD 佐藤 俊一郎 Shunichiro Sato
医療法人社団エスエス会 佐藤歯科クリニック

私が自家歯牙移植を自分の治療のオプションの一つとして取り入れて、もう20年になります。その数は 100 を超えましたが、今現在移植 した全ての歯が生存し、口腔内で機能しています。歯根膜という神経筋機構のフィードバックを持つ移植歯には、インプラントでは得られない 良さがたくさんあります。 自家歯牙移植という言葉を聞いただけで、未だに拒否反応を示す先生が多いかもしれません。残念ながら以前の冒険的な移植がもたらした失敗 からくる悲観論が、今でも残っているようです。しかし、アンキローシスや歯根吸収を起こすことなく長期的に機能している移植歯を目の当た りにすると、正しい知識と技術のもとに行われればその予後は決して悪くないということが分かってきました。 今回は、一つの症例を通して、歯根膜の組織像や再付着の治癒過程を考察するとともに、長期経過症例を提示し、統計的な数字を下に自家歯牙 移植の予後について自分の考えを述べたいと思います。 私なりの正直な発表の中に、何かを感じてもらえたら幸いです。

 

 

Moderator 伊藤雄策先生 小濱忠一先生 インプラント治療

kanasakiヘビーブラキサーの咬合安定を目指して
(四国 sjcd ステップアップコース受講と並行して補綴処置を行った一症例)

四国 SJCD 金崎 伸幸 Nobuyuki Kanasaki
医療法人 仁和会 カナザキ歯科

咬合の不安定を主訴に来院した患者を長期にわたって補綴による咬合治療を行ったケースを報告する。患者は2009年6月に当院を受診し た男性である。患者は他院にてインプラント補綴治療を受けたが、強度のブラキシズムのため短期間で上部構造が咬耗して咬合高径が低くなり 再補綴を受けた。その後、同じような処置を4回にわたり繰り返し受けている。咬合高径が適正な時には無症状だが、咬耗により臼歯のサポート が不足してくると前歯部の早期接触が強くなり歯の痛みや、筋肉痛などの不快症状が出現する。そしてやむなく補綴物を再製するということの 繰り返しに陥っており、何とかこれを改善したいというのが患者の希望であった。 演者なりに3年間治療を試みたが、やはり前医と同じように、補綴直後は調子が良いが、ナイトガードを装着していても、しばらくすると臼歯部 を中心に摩耗が起こり再補綴を余儀なくされるということの繰り返しに陥ってしまった。夜間はナイトガードをしているので咬耗は起こらない はずで、昼間に歯をすり減らしていることは明らかであったが、私の技術では対応できなかった。 そこへ2012年から2014年にかけてタイミングよく四国 SJCD のステップアップコースが松山にて開催されることとなり、本多正明先生 と伊藤雄策先生のご指導を受ける好機を得た。 本多先生の咬合理論を基に伊藤先生のアドバイスを受けながら、診査診断からやり直し、再補綴を行って、ようやく咬合の安定を得ることがで きた。治療終了から2年しか経過していないが、今までとは違い再補綴することなく安定を保っている。診査診断と適切な咬合付与の大切さを 痛感した症例であった。この度、四国 SJCD の皆様のご厚意により発表の機会を得たので僭越ながら症例を供覧させていただきたい。